救急車のサイレンの音が聞こえる。

ずいぶん近いみたい。


あたしはぼんやりとそう考えていた。



救急車のサイレンの音がいつまでも離れていかないのは何でだろうと、混濁した意識の中で不思議に思っていた。



あたし、どうしたんだっけ?


茉優と一緒に教室を出ようとしたところまでは覚えてる。

でも、その後のことが思い出せない。
それよりも眠い。



ふいに、あたしの腕に何かが巻きつけられ、軽い圧迫感を覚えた。

続いて、知らない女の人の声が聞こえる。



「血圧80……下は聞こえません‼」


だいぶ焦っているみたい。
知らない男の人の緊迫した声がすぐに答え応じる。



「血球成分輸血だ。急いで‼それと並行して造血剤投与‼
彼女はまだ高校生だ。死なせちゃいけない‼‼」


「はいっ‼」



薄く目を開けると、狭い車内を白衣姿の見知らぬ医者と看護師がばたばた動き回っていた。