5月
北海道はまだ肌寒い。
そんな日。
日曜日
珍しく祖父母の家にお邪魔した。
最初は楽しく話をしていた。
本題を話さなければ……
そう思えば思うほど
時間が経つのが早く感じた。
祖母が
「久々にあおいちゃんも来たし
たまにはどこか食べに行くかい?
あおい、わがまま言っていいんだよ
何食べたいのさ?」
優しく私に問いかけた。
私はなぜか涙が止まらなかった。
いや、なぜかじゃない
本当はわかっていた。
こんな優しい祖父母と離れたくない
でも、家にも居たくない。嫌だよ。
嫌だ。
「あんた、本当は
何か言いに来たんでないのかい?
言ってみなさい。
何言っても怒らないよ。」
祖父母が優しく私を見て問いかける
涙が止まらない
うまく言葉にもならない
けれど必死に伝えた。
誕生日から1週間後に
東京に家出すること。
もう家にいたくないこと。
でも、祖父母とは
離れたくないこと。
祖父母は涙目になりながら
私の話を真剣に聞いてくれた。
すると祖母は
ちょっと待ってなさい
と言って
寝室に消えていった。
5分もしないうちに祖母は戻って
厚みのある封筒を持って
「ばあちゃんとじいちゃんはね
あんたが家出するってのは
17の時から気づいてたよ。
学校を辞めるってことはね
あんたがやりたい仕事も出来ない
あんたには夢があったろ?
それを無理矢理諦めさせられたんだ
出ていくことくらい
ずっと前から気づいていたよ…
そして、今日
何を話しに来たかもね
東京に何しに行くのかはわからん
けどね
ばあちゃんもじいちゃんも
あんたが大好きよ
あんたがやりたいこと応援してる
だから、ちゃんとやりなさい。
家出するなら貫きなさい。
1年に1回、半年に1回でもいい
電話で済ませてもいい。
元気な声聞かせてくれたら
それでいいから。
だから頑張りなさい。
これは私達からの
ゆういつ出来ることだよ。
持っていきなさい」
そう言って
優しく笑いかけながら
私に封筒を渡した。
「ねぇ、行く前に
ばあちゃんとじいちゃんのご飯
食べたいなぁ」
