6月6日
じいちゃんが運転する車に
揺られながら空港へ向かった。
荷物は少しずつ
祖父母の家に運んであった
家を出ることが出来た。
住基カードも受け取ることが出来た。
数時間前まで遡る
両親や兄弟はまだ寝ているだろう。
猫の、ふーくんと
犬の、れお
を力いっぱい優しく抱きしめて
撫でながら
ばいばい。
また会おうね。
と小さく言葉をかけて
外に出る。
必要な靴も持って
無意味に
お世話になった家にお辞儀をする。
寝ているはずの父の顔が
窓から見える。
こちらに向かってくるのがわかる。
心臓が飛び出そうだ。
逃げ出したい。逃げたい。
走ろうとした時
「あおい」
小さくて、優しい父の声
思わず振り向いてしまった。
父は、仕事用の車まで行き
「お前も来い」
と一言
何かあるのかと思いながら
父の元に向かう。
見覚えのあるカバン。
私が小学一年の時に
父の日にあげたカバン。
「これを持っていけ。」
それは、父と私が写った
小さい頃の写真。手紙。
父が一生懸命貯めたお小遣い。
そのカバンには
母に捨てられないようにと
隠した私の写真
父の日に書いた絵や手紙。
涙目になってる私を抱きしめながら
「ごめんな。辛かったろ。
守れなくてごめんな。
行きなさい。行っていいよ。
このまま居てもお前が辛いだけだろ。
ばあちゃんからお前が学校やめた時に
いずれその時が来ると聞いていた。
今日がその時だ。
家にいる時は出れないが
仕事の時なら出れるから
電話してくれ。
帰ってくる時も家じゃなくていい
どこかで会って顔を見せてくれ。
頑張れよ。あおい。」
涙目で震えながら話す父。
無関心だったんじゃない。
祖父母以外で唯一、
血の繋がった家族。
私を守れば
余計に酷くなると
思って何も出来なかった父。
今ではそんな父が
大好きです。
