無事にパジャマからよそ行きの服に着替えた瑠夏は、ユウゴと一緒に町に出ていた。
To Do Today のリストに書いてあった、瑠夏の守り石とペンダントを買うためだ。
街には沢山の人が店を構えていて、毎日多くの人で賑わっている。通称、「集いの町」である。アレンダーナ王国の中でも最大級の町だ。
瑠夏は、ユウゴに手をひっぱられながら人混みの合間を縫って歩いていた。はぐれない様に、きゅっと握られている手をしっかり握り返した。

ずっと…手繋いだままだ……
なんか、なんか……
デートみたいっ!!

ある店の前で、ユウゴの足がぴたりと止まった。

「ユ、ユウゴ、ここ?お店って」

デートなわけ…ないですよね、はい、そーですよね…

…って、私なんでがっかりしてんの!これじゃまるで…ユウゴのこと好きみたいじゃんっ!ちゃんとしなきゃ…!

「そうだよ。テーニンさんの店だ。アレンダーナ王国の魔法使い御用達の有名な店。ちょっと狭いけどな、まぁ入ろう」
手を繋ぐことに全く抵抗がなく、平然としているユウゴを見て、瑠夏は自分の動揺っぷりを恥じた。
年季が入ったドアを開けると、アンティーク調の家具が並んだこぢんまりとした店内が姿を現した。奥の机に、1人の男が座っていた。
「ようこそ、“テーニンの店”へ」
「こんにちは、テーニンさん。」
ユウゴは常連でもあるかの様に、堂々と店の奥に進んで行った。

私、ユウゴのこと好きなのかな…?
ユウゴは、誰か好きな人いるのかな。
だめだめだめだめ…違う違う…

「瑠夏」

はっ、はいっ!今行く!
はっずかしい!

瑠夏は目でそれを伝えて、ユウゴの後ろに並んだ。
「瑠夏は、アレンダーナの救世主として、つい最近ここに呼ばれた。俺と同じ、12歳。今日は瑠夏の守り石とペンダントを買おうと思ってるんだけど、探してもらえるかな?お金は沢山貰ったから、一番良いものをお願い」

一番良いものっ!?そんな物貰っていいのかな……?

そんな瑠夏の心の中とは打って変わり、ユウゴの言葉にテーニンさんは何度か頷いた。そしてにこりと笑い、
「わかりました。お探しします。瑠夏様、こちらに立って下さい。まず始めに、あなたが秘めた能力を調べますね。」
瑠夏は言われた通りにした。テーニンさんが杖で示した白い線で書かれた円の中に立った。瑠夏が円の中に入ったのを見て、テーニンさんは杖で床をトントンと叩いた。
次の瞬間、何の変哲も無かった円の周りに、ふわっと群青色のヴェールが瑠夏の体の周りに浮き上がった。
そのヴェールは、徐々に色味を変え、ピンクや紫やオレンジ、白などの鮮やかな色が瑠夏を包み込んだ。
「うわぁぁぁ…すごい綺麗…」

ーその後、別室で待つ事10分ー

「瑠夏様。能力の判定が出ました」
そこで、瑠夏たちは1枚の紙を渡された。

「瑠夏の能力。読み上げるぞ」
「うん」

「栗原瑠夏が秘めている能力。えーっと、風、水、氷を操る。結界を作る。光をもたらす。“杖”の使い手となる…え!?」
突然ユウゴが発した声に瑠夏は驚いた。

「どうしたの?大丈夫?」

そっとユウゴの顔を覗き込むと、いきなり肩を掴まれた。

「えええ、ほんとに大丈夫!?何があ…」
「何があったのはこっちのセリフだ!」
「へっ?」

「まぁまぁお二人さん、落ち着いて、話を聞いて下さい。大丈夫です、ユウゴ様。」

テーニンさんの助け舟で、ユウゴの手が瑠夏の肩から離れた。

「ご説明します、瑠夏様」
そのただならぬ雰囲気に、瑠夏はこくんと唾を飲み込んだ。