どうかこの声あなたに届けて



「ふふっ」


ちょっとだけ漏れたその笑いにいっくんは気づいたらしく、「なに笑ってんだよ?」って言ってきたから


「ちょっとね!!」と曖昧に答え、私は駆け出した。


今だけは病気の事を忘れて走りたい。


後ろから「おーい待てよ絵麻ぁ!!」という声が聞こえるが私は足を止めず、「いっくん遅ーい!!」なんて言った。


後ろではいっくんの「なんだよもぉ」という不貞腐れた声が聞こえる


「ふふっ、これはちょっとした意地悪だよ」


少し微笑み私は小声でそう呟いた。