清宮先輩と途中で別れてから、私はいつも通り沢山の友達と挨拶を交わしながら教室に入った。
でも、今日はなんだか違和感がある。
みんな普通に挨拶をしてるんだけど、何か言いたそうな顔なんだよね?
「おはよう、陽葵。」
私は教室の真ん中辺りにいる陽葵に向かって挨拶をする。
「おは、あっ、萌香うしろっ。」
「え?」
なんだろ?と思いながら振り向くと、モサ眼鏡の桐生が私のすぐ後ろに立っていた。
「邪魔です。」
「あ、ごめん。」
私は慌てて横に避ける。
今日の桐生はなんだか冷たい?ような気がする。
いつものフワッと優しい感じの空気感がない。
イケメンバージョンの桐生は意地悪だけど、モサ眼鏡の桐生はいつも優しいのにな……。
「萌香、大丈夫?」
陽葵が心配そうに私の顔を覗き込む。
「え?何が?」
「なんか、ションボリしてるように見えるけど。」
…ションボリ?私が?
「別に何もないよ?大丈夫。」
自分では気付いて無かったけど、さっきの桐生の態度が少しショックだったみたい。
昨日は絡まれてた私を助けてくれて、優しい笑顔を見せてくれたくせに…。
優しくしたり冷たくしたり…なんなのよ一体。
「……のか、ほーのーかー!」
「な、なに⁈」
「もぉー、何回も呼んでるのにボーッとしちゃってさぁ。」
「ごめん、ごめん。」
「ーーで、昨日は清宮先輩とどうだったの?」
陽葵がそう質問した瞬間、クラスの女子が一気に私達の周りに集まって来た。
「私も気になってたの。」
「清宮先輩に告白されたって本当?」
「2人は付き合ってるの?」
一度に勢いよく質問され私が戸惑っていると
「おらおら、お前ら神崎が困ってんだろ。散れ、散れ。」
朝練終わりの健ちゃんが肩にタオルをかけた姿で現れた。
クラスの女子はブーブーと言いながら元の場所に戻って行く。
「ありがとう、健ちゃん。助かったよ。」
「どういたしまして。ーーで、昨日は連絡無かったけど何もされてないよな?」
うーん………
昨日は3年の女子に絡まれて、今朝は清宮先輩に頬にキスされましたーーー
なんて言えないっ///
「…うん、別に何も無かったよ。」
「なんか嘘くさいな…まさかっ、付き合ってないよなっ?」
健ちゃんの声が大きくて、皆んなの視線が一斉に私に集まったのが分かった。
皆んな気になってるみたいだから、ちょうどいいか。
「付き合って無いよ。ただの友達だよ。」
私の返事を聞いたら、健ちゃんを筆頭に周りの皆んながフゥーと大きな溜息をついた。
一体、なんの溜息⁇
「ならいいんだ。清宮先輩には気をつけるんだぞ。」
そう言って健ちゃんは自席に戻って行った。
「どういう事なのか全く分からないんですけど…。健ちゃんって清宮先輩のこと嫌いなの?」
私は陽葵に聞いてみる。
「うーん…、ココじゃちょっと言えないかな?お昼休みに誰も居ない所で話すよ。」
「…そっか、わかった。」
この後、私はお昼休みの屋上で、健ちゃんと清宮先輩の間に何があったのかを知ることとなるーーー