始まりは、嘘。

私はさっきまでの恐怖から解放されて安堵した。



そうすると、

「……ん」



目の前にはほんのりとバニラの香りがするハンカチが。



「涙拭きなよ」



私、泣いてたんだ。


「ありがとう、ございます」




未だに背中から伝わってくる温かい体温。

それがなんだか優しくて。


余計に涙が零れてしまった。