何も知らない君

「ふぅ。まだ、起きないか。」

母は、腕時計を見て、ため息をついた。

「仕方ない。仕事、行かなくては。」

少し困ったような顔をして、一度母は振り向いた。
でも、すぐに出ていってしまった。

(忙しい人なんだなぁ。私のお母さんって。)

珠洲音は、気がついていない。
珠洲音は、記憶喪失になりかかっているのを。

(私…………此処に戻ってこれたんだ……)