すきなひと




「ほら、そろそろ片づ……」
「あ、あの……」



鈴を転がしたみたいなかわいい声とともに、私が入ってきたドアではなく、直接美術室に繋がるドアから女の子が入ってきた。

私も瞬もその子の方を見る。


くるん、とカールした髪の毛は胸まで伸び、身長は私より小さくて、可愛い子だった。


あ、この子知ってる。


瞬と同じ美術部で1年生の上條綾(カミジョウアヤ)ちゃん。


かわいい、ってクラスの男子が騒いでいた気がする。それに、何回かこうしている時に見かけた。



「何」


瞬は寝起きのテンションでそっけなく尋ねた。

おいおい。私じゃないんだよこの子は。
こんなか弱い女の子に私と同じ態度とったら、普通に傷つくだろう。


「鍵、閉めますけど……」


そんな瞬の態度にタジタジになってしまった綾ちゃん。

かわいそうに、怯えてるじゃないか。


「部長は?それか、せんせー」
「先輩は塾があるって……、先生は今日会議でずっといませんでした」

綾ちゃんの言葉に、瞬はイライラと頭をかいた。

「いーよ、俺やっとくからそこ置いといて」
「で、でも」


いーから。と瞬は重ねて言う。そして絵の具やら何やらを片付け始める。

もう話すことはない、というふうに。


2人のやりとりをぼんやりと聞いていると、綾ちゃんが私を見ていることに気づいた。