「大丈夫だよ、瞬は」
「……」
「でもナオちゃん。きっと瞬は、ナオちゃんがいないと大丈夫じゃないよ」
ナオちゃんを安心させてあげたい。だけど、そうしたら、今すぐにでも彼女が消えちゃうような気がするんだ。
「今瞬ね、家事猛特訓してるの。でも、全然ダメダメなの。ねえナオちゃん、だから、早く帰ってあげてね」
嘘だった。瞬は元々器用だし、料理も少しずつ覚えてきている。苦労はしているけど、すぐに慣れるだろう。
でもダメなんだ。瞬も、ゆうちゃんも、それに私だって。
ナオちゃんがいないとダメなんだよ。
だからお願い、いなくならないで。
「満」
ナオちゃんの声は、少し震えていた。
「うん?」
私は思わず、彼女の手に自分の手を重ねていた。その手も、小刻みに震えていた。今にも壊れてしまいそうだった。
「満は、瞬のそばにいてくれる?」
困ったように笑うナオちゃんを見て、私は胸の奥から何かが湧き上がってくるのを感じた。
「うん。絶対、そばいるよ。他に誰もいなくなったって、瞬のそばにいる」
私がそう言うと、ナオちゃんは、いつもの笑顔を見せた。 だけど、その目からは涙が溢れ出した。たくさん、たくさんナオちゃんは涙を流した。
「満」
「うん」
「瞬を、よろしくね」
ナオちゃんの泣き笑いは、病室の窓から滲んできた夕日に、溶けていった。

