すきなひと





私たちは電車に乗っていた。

新年の始発なんて、人はほとんどいない。この車両には、私と瞬だけが乗っていた。


隣に座る瞬は、マフラーに顎を埋めて何かを考えているように見える。


ナオちゃん。私がそう呼んでいる彼女は、本名を久野尚。瞬のお母さんだ。


私たちが中1の時に亡くなった。

がんだった。


私の両親は共働きで、小さい頃は、よくナオちゃんに遊んでもらっていた。お菓子を一緒に作ったり、洋服を買いに行ったり。家に親がいない寂しさを忘れさせてくれた。


ナオちゃんはお母さんと同い年だけど、ある意味で幼さを持った人だった。だからからかもしれないが、私はナオちゃんを年の離れた姉のように思っていた。


瞬も瞬で、ゆうちゃんが家にいない分、お母さん子だった。


「瞬、お花忘れちゃった」


ふと思い出して、瞬に話しかける。すると瞬は、顔をくしゃりとしてあくびをした。こいつは何回あくびをするんだ。


「大丈夫だろ」


「そっか」

電車の中、暖かい。私がそう思うと同時に、眠気が襲ってきた。隣に瞬がいると、ひどく安心してしまうのだ。私はそのまま意識を手放した。