すきなひと




不思議だ。



瞬の絵は不思議。



「うん、いい感じ」

瞬は満足げに言う。


「瞬はさ……。ここ、こうすればもっとよくなったかもーとか、絶対に言わないよね」


ふ、と思ったことを口にしてみる。

そういえばそうだ。

瞬はいつも自分の作品に満足しているみたいだった。マイナスなことは一切言わない。まるで自分の子供の勇姿を見た父親みたいに、うんうん、ってただ、頷く。


「……んー、そうやって思わないように仕上げてるっていうのもあるな」

と瞬ははっきりと言い、続ける。


「でも俺の絵は、決して完璧じゃねーよ。俺が描いた絵は、いわば俺の分身みたいなもので、俺自身、完璧じゃないんだからな。完璧じゃない人間が、完璧なものなんて描けねえよ」


語る瞬の目は真剣だ。私は、そんな瞬の目に吸い込まれそうになる。



「でも、俺はそれでいいと思ってる。完璧じゃなくて。どこか、欠けている部分とか、そういうのがあるから、魅力があるんじゃないかって」



「……」



「それはでも、人の価値観の違いもあるけど」