瞬は一度見たものは絶対忘れない。
それは、瞬間記憶能力みたいなものなのだと思う。
難しいことはわからないけれど。
絵を描いているときの瞬は、普段の頼りない彼とは違って、すごくかっこいい。
それから、瞬の絵はキラキラしてる。
見た瞬間、胸がぎゅう、っとなる。
そんな感じだ。
瞬の目には、いつもこんな景色が見えているのかと思うと、羨ましくなる。
「瞬ーっ」
「んー」
瞬の背中に、額をくっつける。
トクトクトク。
自転車を漕いでいるせいか、少し早い鼓動。
周りの男子より細くて小さくて、筋肉もない頼りなさそうな背中だけど、私は好きだ。
「今日夜ご飯どうする?ゆうちゃんは?」
ゆうちゃん、と言うのは瞬のお父さんのこと。
本名、久野勇次郎。
小さな頃から知り合いなので、年の離れた友達って感じだ。
あー、と瞬は唸りながら言葉を選ぶ。
「締め切り前だから会社に泊まるんだと思う」
ゆうちゃんは少年漫画の編集長をやっていて、結構忙しい。今日みたいに、締め切り前には家に帰ってこないのだ。

