大きな桜の木のある公園で

幼い私はある男の子と一緒にいた

「春花(ハルカ)ちゃん…ごめんね…。引っ越すことになっちゃったんだ」

俊(シュン)くんは申し訳なさそうに呟いた


私達は同じ小学校に行く約束をしていた

だけど、俊くんは

遠くへ引っ越してしまうらしい


「もう…会えないの…?」

私は泣きながら聞いた

俊くんと離れるのは嫌だった

家も隣でいつも一緒

いわゆる『幼馴染み』だった



だけどそれだけじゃない

淡い恋心を抱いた

私の初恋の相手



「ううん、絶対帰ってくる!だから待ってて?」




これが私と俊くんの約束


桜の木の下での約束…









「春花ー?学校遅れるわよー」

階段の下でお母さんが私の名前を呼ぶ

「分かってるー!」

私も負けずに言い返す

部屋を出ようとして、一歩戻る

鏡の前で一回転

まだ着慣れない制服を来た自分に

ちょっと違和感もあるけど

いろんな期待がいっぱい詰まってる



今日から私、高校生です!




バタバタと階段を降りて

急いでローファーを履く


「いってきまーす!!」


私は今日1番の声をあげ

期待の足で家を飛び出した



しかし隣の家の前で足を止めた

「まだ帰ってこないのかな…」

白と茶色の家を眺めて呟く



幼い私達の可愛い約束

あの子は覚えてないかもしれない

それでも

私は待ってる

あの子の帰りを…



『待ってて』

その言葉を信じてる








「そういえば、あの子に言うの忘れたわね…」

今思い出したかのように

母の独り言がリビングに漏れる





私はまだ何も知らずに急ぎ足で

高校に向かっていた





そして、入学式も終わり

教室で自己紹介タイムが始まった


あぁ〜順番もう隣の人だよー!

どうしよう緊張してきた

何話したら良いのかな?


隣の席の男子が立つ

私はその時、やっと隣の男子の顔を見た



あれ…

ちょっとまって

もしかして…



その横顔はどこか懐かしく

あの子の顔と重なった

背はすごく高くなってる

でも分かる



私の心臓がさらに強く脈打ちだした