「ねぇ、何してるの?」

これが初めて君にかけた言葉


そして


「桜を探してるの」

これが初めて聴いた君の声



出会いは今



僕は肩からずれているまだ少し大きい

黒いランドセルを背負い直して

もう一度聴いた



「桜…?だから見てたの?」



目の前にいる女の子は

ついさっきまで僕の家の前に咲く

小さめの桜の木の前に立ち

上を見上げていた


自慢じゃないけど

桜の木がある家なんて珍しくない?


僕はかっこいいと思ってる

あんなに綺麗に咲く桜が

僕は大好きだから



もしかしてこの子も…?

って期待を込めてかけた言葉だった



じゃなきゃあ女の子になんて

声をかけたりしない



女の子は小さく頷いた

そして桜の方を向いて言った



「だけど、これじゃあないみたい」



これじゃない?

つまり探してる桜じゃないってこと

だよね?


そもそも、『桜を探してる』って

どういう意味何だろう…



不思議に思い考えていると

「ねぇねぇ!」と元気な声が飛んできた



「もーっと大きな桜の木、知らない?」



腕を大きく広げてそう言った



「もっと大きい桜?」


「うん!すごい大きくて綺麗なの!」



聞き返すとキラキラした言葉が飛んできた


キラキラが見えるわけじゃないけど

この子が話す言葉一つ一つが

特別のように感じた



大きな桜か…

この近くにも何本か桜咲いてるけど

そっちは見たのかな?



「この辺りの桜は全部見たの?」


「ううん、ここが最初なの」



女の子が首を横に振ると

2つ結びになってる髪が揺れる



「じゃあ一緒に見てまわる?」



僕の提案にその子は喜んでくれた



「いいの?ありがとう!」



その笑った顔に目の奥がじんとした

悲しくもないのに涙が出そうな



胸の辺りがぎゅって押されたような

苦しくて言葉がつまる



そんな感じ



僕がそんな自分自身に戸惑っていると

その子は僕の手を取った



「行こ!」



急にそんなことをするから

僕は驚いて少し固まってしまった


僕の顔を除き込む大きな丸い目は

透き通っていて輝きを持っていた



「…う、うん」



戸惑いと驚きに困惑しながらも

手を握り返して歩き出した