大きく、息を吸い込む。
もちろん不安はある。足の震えも止まらない。

だけど、それと同時に胸の高まりも止まらないの。
こんなにも多くの人に私の歌を聴いてもらえる。

——そんなこと、半年前の私は想像できた?




「ほんとに初めて?良かったよ、思ってた以上にずっと。俺らも負けてられないな」


舞台袖に下がった私の肩に、ぽんっと倉田さんが触れる。
それにとてもホッとして、重圧から開放された気がして、ギターを持ったままだというのにその場に座り込んでしまった。

ベースの丸谷さんがその様子をおかしそうに笑って、ギターボーカルの佐々木さんが私の手の中にあったギターを近くのスタンドに置いてくれる。

私は立ち上がれそうになくて、その様子を呆然と見つめていた。


「そろそろ行くかぁ」


暗転した舞台、その向こうからは三人を待ち望む声が湧いている。

倉田さんがさっきみたいに私の肩に軽く触れて、佐々木さんと丸谷さんも同じように私の肩に手を置いてから、まだ真っ暗なステージに消えて行った。
それが三人からの労いに感じられて、私はしばらくその余韻に浸った。


私の、一生に一度の初舞台が終わった。