日頃の感謝もあるし、もちろん成果を隠したいわけではないので、持っていた用紙を彼の机の上に滑り込ませた。

尾瀬くんはそれを上手く受け取って少し眺めてから、パッとこちらに顔を向けた。


「よく頑張ったね。やっぱり出来るのにやらない子だったんだ、萩原さんは」


優しく笑って、指でグーサインを作って見せてくれる。

そんな姿を見てると、頑張って良かったって感情が素直に湧いてくる。
こうして尾瀬くんが褒めてくれるなんて、こんな特典も付いてるなら何だって頑張れる。

馬鹿なことを考えて頬が緩む。
締まりのない表情をしていると、さっきの私がしたみたいに、彼も順位表を机の上に滑り込ませてきた。

慌てて受け取ると、私のが返ってきただけじゃなく、もう一枚同じ大きさのものが重なって二枚になっていた。
別の紙には“尾瀬 貴大”って文字があって、思わず左隣の彼を見る。


「これ、」

「俺だけ見るのって不公平だから。それに前回、勝手に見た借りがあるしね」


そうやって、ふにゃりと笑ってみせた。

私の順位表と同じ紙で出来ているはずなのに、どうしてか少し重く感じるのは気のせいかな。
私みたいにちょっと努力しただけの人間とは違う、普段からコツコツと積み重ねた結果がそこに書かれていると思うと、見るのにも緊張してしまう。

遠慮がちに、その紙に目を向けた。


「お、尾瀬くん」


気の抜けた、変な声が出た。
そんな私をクスッと笑った声が、左耳に届く。