カードに書かれたURLを検索すると、あるホームページがヒットした。

スリーピースバンドのflash。
彼らの今までの活動と、ライブの予定が書かれたサイトだ。
目の前のこの人は、ドラムの倉田智樹さん。アルファベットで、Kurata Tomokiと記されている。

あと二人、ギターボーカルとベースの人がいるらしい。
インディーズデビューも果たしている、本格的なバンドだということが分かった。

大丈夫、全然怪しくなかった。


「さっきの繰り返しになるけど、1ヶ月半後にライブハウスでライブするのね。良かったら、オープニングアクトとして出演してくれない?」


スマホを握る手が震えていた。
きっとこれは、寒さのせいだけじゃない。


「私で、いいんですか?オリジナル曲もないし、第一、ちゃんとしたライブしたことないです」

「正直に言うとさ、実は別に決まってた人がいたんだ。でもそのバンドが出れなくなっちゃって、代わりを探してたところに君がいた」


倉田さんは、優しく諭すような話し方で接してくれる。
あまりに突然の出来事に動揺してる私の心情を、理解してくれているようだった。

路上ライブの後に掛けられるのは、せいぜい応援の声くらいだった。
「また聞きにきます」とか「頑張ってください」とか、そういう言葉でも私は、感謝してもしきれないくらいの思いでいたのに。

こんなことがあるなんて。


「本当はバンドで探してたんだけど、君の声があまりにも良くて目を引いたものだから。カバーでいいよ、全然。“箱”の中で歌う経験、してみない?」