机の上に置かれた白い用紙を見つめる。
どれだけ長く見つめたって、マジックみたいに消えてくれるわけもない。

予想はしてたけどやってきた、進路希望調査票。


冬休みはダラダラ過ごして、あっという間に過ぎていった。
毎年のお約束で正月太りもちゃんとした。辛い。

そうしてやってきた始業式の日。
朝見かけた3年生達はセンター試験が目前ということもあって、みんな憂鬱な顔をしていた。
自由登校の期間ではあるけど、講習が受けられることもあってほとんどの3年生が登校していた。


元日に神社で出くわした尾瀬くんは、私の左隣で真剣に机に向かっている。
弁護士を目指してるってことは法学部だろうけど、どこの大学目指してるんだろ。
尾瀬くんの学力だと、この辺りで通える範囲の大学はだいたい大丈夫な気もするんだけど。

そんなことを考えながらさり気なく左隣の机を覗き込もうとすると、そんな私の魂胆が伝わったんだろうか、尾瀬くんがハッとした表情を浮かべて手元を隠す。
見るなってはっきり顔に書いたような顔をして、恨めし気にこっちを見ている。

お、なかなかにレアな表情。

お返しというように私の机も覗き込んできて、咄嗟のことだったので何の対処も出来ず、ばっちりと見られてしまった。
彼は目をぱちくりさせて、私と白い紙を交互に見比べる。

いかにも何か言いたそう。
でも私は気付かないフリをして、用紙を裏返して目線を別の方向に逸らした。

その後も左からの視線は痛い程感じたけど、元日に自分のことを話してくれなかったことに関しての反抗も込めて、わざと無視をしてやった。