「掲示板見た?」

「見た見た」


その日は朝から雨が降っていて、本来であれば持久走をするはずだった年内最後の体育の時間は、屋内でのバスケットボールに変更になった。
2面あるコートを男女それぞれで使い、半分お遊びのような感じで、館内は声援とふざけた笑い声で包まれている。

私はと言えば、体育館の隅で膝を抱え、美亜と談笑中。


「やっぱり尾瀬って頭いいんだねぇ。文系4位だって」

「ね。ちらっと見えたけど、すっごく綺麗にノートまとめてた」

「え、何それめちゃくちゃ欲しい。いくらで売ってくれんだろ」


そう両手を合わせて祈るようなポーズを取る彼女だけど、20位以内に名前が載っていたのを私は見た。
当の私はといえば、本当に真ん中くらいの微妙な順位。

向かいのコートにいる尾瀬くんをぼーっと見つめる。
友人達と笑い合いながらボールで遊んでいる。


「その後進展あった?尾瀬と」


そんな声にハッとして、すぐさま視線を美亜に戻す。
ニヤニヤと、意地悪な笑みを浮かべながら私を見る彼女。


「進展も、なにも」

「えー、つまんない。アタックしないの?」

「いや、何でよ。好きでもないのに?」

「タイプって言ってたじゃん」


あれは、美亜がワイルド系が好きだって言ったから、私はそれよりかは可愛い系が好きだよって返しただけで。
それだけで!

そんなことを巡らせながら否定しようとするのはもうお見通しのようで、ふふっておかしそうに彼女は笑ってみせる。

いつも私より一枚上手なのだ。