「え?」
「貸してやるよ」
「でも」
「まあ、お守りみたいなもんだ。俺が面接してた時も付けてたから、願掛けはバッチリだぞ」
「…いいの?」
嘘みたい。
先生が、私のために?
「みんなには内緒な」
古谷先生はそう言って、ちょっと照れたように笑った。
そんな気がした。
いやいや、きっといつも通りの表情なんだろうけど、私の目にはフィルターがかかっているようだ。
「ありがと!」
貸してもらった時計を見つめてたら、嬉しさで胸がいっぱいになった。
頬の筋肉が自分の意志とは関係なしに緩んでしまう。
私は、時計をぎゅーっと軽く抱きしめてから、大切にポケットの中へしまった。
「頑張るね!」
「うん、頑張れよ!」
お疲れ、といって扉が閉まるまで、古谷先生は私に手を振ってくれた。
