やめやめ!難しいことは考えない!
私の中に、別の人――いのりの記憶があるのは何故なのか。
どうせ考えたって分からないし、頭が痛くなるだけだ。
「なな、おはよ」
頭を押さえていたら後ろから声をかけられた。
振り向かなくても分かる。
家がご近所の幼なじみ、洸輝(こうき)だ。
「洸ちゃん、おはよう」
「どうした? 寝不足か?」
「違う違う。ちょっと考え事」
洸ちゃんは自然に私の隣に並び、駅までの道を一緒に歩く。
洸ちゃんとは幼稚園から一緒で、高校も同じところに通っている。
高校までは徒歩と電車で1時間近くかかるが、
こうして時間が合ったときには一緒に通学するのが当たり前になっていた。
