また、間が空いた。
先生の手が胸元に伸びて、服をぎゅっとつかむ。
先生のそれも、多分癖だと思う。
時々見せるその仕草は、とても儚げだ。
「……忘れたいんだ、いのりのことは」
忘れたい。そう言った。
その言葉の意味は。
「知らない」と「忘れたい」じゃ大きく違う。
忘れたいってことは、忘れられてないってことだから。
「辛いんだ。いのりは、もういないから」
まるで独り言のように、小さな声でポツリとこぼす。
しかめた顔は、
その辛さを、苦しさを、私に伝えてきた。
心の中でいのりが泣いた。
同じ苦しさを、いのりも味わっている。
