「……なな?」
洸ちゃんは、事情を何も知らない。
いのりのことを打ち明ける気はないけど、
心配をかけてしまっているのは申し訳ない気持ちになった。
幼なじみがそんなに頻繁に頭痛に悩まされていたら、私だって心配する。
「本当に大丈夫だよ。でも、一応始業式の間は休んどく」
無理矢理納得させて、2人を送り出した。
「はぁー……」
ため息が出た。
さっき、誰かの声にいのりの記憶が反応した。
いろんな声が飛び交っていた中、一際はっきり聞こえたその声は、
チカの声に似ていた気がする。
――記憶の中で、いつもいのりを呼ぶあの声に。
