ああ、そうだ。この子はいのりじゃない。

いのりはもうこの世にはいないんだ。



現実を突きつけられるのが辛い。

いのりが死んだという事実を再認識する瞬間が、辛い。



……16年だ。
いいかげんもう、乗り越えなければいけないのに。


時間が解決してくれるなんて嘘だ。

いつになったら辛くなくなるのか、見当もつかない。




――いのりに会いたい。会いたくてたまらない。



「……誓」


そっと背を撫でる直人の手が温かくて。


目を閉じたら、目尻に溜まっていた涙がそっと溢れた。