奪いとれっ!!

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獅倉くんのお母さんと別れて一人帰り道。


詳しくは聞けなかったけど、獅倉くんはお母さんと何かあって一人暮らししてるみたいだった。


でも、すごく優しそうなお母さんだったけどな。


その家々にしか分からない事情もあるし、『家族団らんが当たり前の家ばかりじゃない』そう彼が言ってたことがあったけ。


私にはお父さんとお母さんがいて、それが当たり前で。

でも獅倉くんには当たり前じゃなくて。

.....私には計り知れないことだと思う。




────私、本当にもう獅倉くんと会っちゃいけないのかな?


会う理由もないけど。

きっと今私とすれ違ってる人たちと一緒で、きっかけがなければお互い知らないまま。

そんな関係に戻てしまったんだ、私たち。


せっかく出会えたのに.....そう思ったのは私だけで。


悲しいな。

あは、悲しいのは私だけなんだね。

彼は彼の日常を過ごしてるだけなんだね。


心に刺さった氷の欠片はいまだ刺さったままで.....ううん、さらに痛みを増しただけだった。