遡ること1年前…。

俺は中学生になった。昔から人見知りしないと言われてきたが今回ばかりはキツかった。知り合いがゼロ。昔からこれといって好きな物がない俺は自己紹介も印象薄め。中学生活は終わりか。そう思った、そんな時声をかけて来たのが坂宮だった。坂宮はずっとバスケをやっており人気者で知り合いも多かった。おかげで俺はクラスの中心人物になる事が出来た。

しかし…すぐ部活決めで悩みに悩んだ。確かに俺は身長が高い。バスケやバレーに向いている体をしていると自分でも思う。が、嫌だった。バスケは従兄弟が、バレーは父親がやっていた経験があり比べられたからだ。他に身長の活かせるスポーツは…?あるにはあったが、ピンとこない。そこであり得ないだろうと思いつつ最後に覗いたのが卓球部だった。
サッカーや野球と同じ球技でありながらなにも有名になる事のなかった、日本が忘却の彼方に飛ばそうとしているスポーツ。俺は先輩に聞いた。
ここで身長は活かせるか、と。
するとその小さな先輩は答えてくれた。

「うーん。身長、170㎝くらいでしょ君。向いてないよ。」

当たり前だ。だが、この部には160㎝位だと思われる人が多い。

「でも、この年になれば卓球に身長は余り関係なくなるね」

隣から言ってくる先輩がいた。

「君、おいでよ、スポーツの中でも余り有名にならないこのスポーツを一緒に有名にしよう。」

俺は多分、この言葉に惹かれたんだと思う。
もちろん担任は驚いた。クラスの中心人物である俺がかっこいいサッカーではなく地味な卓球なんて。それでも俺は何かに惹かれるようにして滞りなく入部した、卓球部に。