[図書委員ってなんですか?]





「真緒!一緒に帰ろ~。」
「ごめん!私今日、日直だから掃除しないといけないの!先、帰ってて!」
「そっか!わかった、じゃあね!」
「うん、ばいばーい!」
親友の香織が鞄を持って教室を出ていった。
もう、教室には私以外誰もいない。
「はぁ……もう1人の日直誰よっ!結局私、1人で全部やってるじゃん。」
呆れながら呟いていると、窓の外から運動部の声が聞こえてきた。ほうきを置いて窓によりかかる。私は帰宅部だから運動部の辛さが分からないなぁ。小さい頃から習字一筋!習字をやるために、部活には入らず週3回の授業を受けている。今までたくさんの賞をもらってきた。元々、内気な性格で人前で話すことなんてできなかったけど、習字で初めて賞をとり、全校の前で大きな賞状を貰った時から、皆と少しずつ話せるようになっていった。習字は私の人生を変えてくれたのだ!

黒板の下に白いチョークが落ちていたので、手に取った。久しぶりに触った。高校生になってから1ヶ月、挙手もあまりしなくなったせいか、黒板に字を書くことなんてなかった。





『白川真緒』
'シラカワマオ'
黒板に自分の名前を書いてみた。手に白い粉がついてカサカサする。手をはらって、黒板消しで消した。掃除は終わったから、後は日誌を書くだけ!早く書いて帰ろう。
教卓の上にあった日誌を手に取り、自分の席へ向かおうとしたが、
先生の机の上に置いてあった出席番号順の名簿を見た。もう1人の日直が気になる。





もう1人の日直の人……。佐島大和くん、、。
話したことないな、、。誰だろう。
そう思いながら自分の席へ。

日誌を書き続けていると、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。走ってるみたい。随分と急いでるんだなぁ……。なんて思ってたら、教室に入ってきたよ!
……担任の尚子先生!!
「な、尚子先生?!どうしたんですか、そんなに急いで。」
先生は教卓に、持っていた荷物を置いて私の方に向かってきた。
なんだなんだ。





「あのね!!白川さん!図書委員やってみない??!」





えっ。
なんですか、いきなり。

「え、えと……どうしました、急に。」
先生は呼吸を整えて、私に話し始めた。
「実はね、図書委員をやってくれる女子がいなくてね...。明日までに決めなきゃいけないのよ。決まってないの、ココのクラスだけで...
男子の方はもう決まってるんだけど、女子がねぇ、、。白川さん、本を読むことが好きってお母さんから聞いたから、どうかなって思って。」

え、え!確かに読書好きだけど、急に言われても……!!まだ、分かんないよ!
日誌を書いていたペンを置いて、焦っていると
「……どう?図書委員、、やってみない?」













運動部の声を聞くために開けておいた窓から強い風が教室に入ってきた。








「やります。」




なにを言ってるんだろう。別にやりたくなんかないのに。なのに、、、口が勝手に。
風に背中を押されたみたいだ。風が『やれ!』
って言ったみたいだった。

「ありがとう!白川さん、よろしく頼むわね」
先生はそう言って教室を出ていってしまった。





頭が混乱する…。グルグルって。
まぁ、何も委員会に入ってないよりはマシかなと思って開き直った。
いろいろ考えてるうちに日誌は書き終わり、先生の机の上に置いて、私は下校した。

明日から図書委員か。なんか憂鬱だぁ。





そういえば、男子の図書委員って誰だろう。
しっかりしてる人がいいなぁ。














佐島大和side*
「悪ぃ、俺教室に携帯忘れてきた。すぐに戻るから待ってて!」
「はいはい、待ってるよー。」
親友の悠真はいつもクールでちょっと冷たい。
それが彼の性格だ。もう何十年も一緒にいるから慣れたことだ。
部室から教室……。 結構遠いな。
1階の部室から3階の教室。階段をたくさん駆け上がってやっとたどり着いた。
「……えーと、携帯、携帯...。」
机の中を探していると、悠真がこっちに来た。
「なんだ、お前も来たのか。」
「お前、方向音痴だから心配なんだよ。」
「ったく!大丈夫だから!もう1ヶ月も経ってんだぜ?場所くらい覚えたよ。」
「この学校いろいろと複雑な造りだからな。」
「うん、それはわかるー、...あ!あったあった。携帯~携帯~。」
「ほら、帰るぞ。」
俺は携帯をズボンのポケットに入れて、悠真の後を追いかけようとしたが、ある物が目に入ってきた。
「ん?日誌、、?」
鞄を置いてパラパラめくっていくと……
「え?!俺、今日日直だった?!」
自分の名前が書かれていた。
「なにやってんだよ、早く来いよ。」
悠真が呆れて教室に入ってきた。
「悠真!俺、今日日直だったみたい。そんなの知らなかった…。やべぇ、任しちゃったな。」
「はぁ……。もう1人の日直は誰なの?男子ならいいけど、女子だったらちょっとかわいそうだな。」
悠真も日誌を見てきた。
「シラカワ……マオ?」
俺が悠真に聞くと、悠真はため息をついた。
「女子だな。明日、ちゃんと謝れ。お前の分の反省もちゃんと書いてくれてるぞ。」
悠真が指を指した。
「ホントだ……。悪いことしたな、、。」
綺麗な字で俺の分の反省が書かれていた。
「綺麗な字だな...。」
俺が見とれていると、悠真が襟を掴んだ。
「見とれてる場合かよ。お前、図書委員になったんだろ?しっかりしろよな。」

そう。俺は図書委員になった。直接先生の所に行って、頭下げたんだ。どうしても図書委員になりたかったから。
漢字ふりがな
「図書委員の女子、誰になったんだろ?まだ先生が決まってないって焦ってたよね。」
「あぁ。まぁ、明日には決まってるだろ。」
「知らない子だったら、話しかけにくいな。」
俺は鞄を肩にさげ、悠真と教室を出ていった。




図書委員になったのはいいけど、ちゃんとやれんのかな、俺。