「どうした?」



俺はそんな美夜のそばにい続けた



『歌は好き。
歌っていると心が晴れて
何もかも自由になれる気がするの』



わかっている


歌っている彼女はいつだって
自由だった



『でも、それはひろくんの
歌だったからなんだ』



「え?」



小学生の俺たちは
まだ自分の未来が
見えていなかった




『音楽をはじめから知れて
すっごく楽しかった


でもだんだんひろくんが
そばにいない、
ひろ君の歌じゃない歌を
歌わなきゃいけないことが
辛くなった』




ぽろぽろと涙を流す
彼女に俺は何をしていいかわからなかった




「・・・・俺はそばにいるよ。
俺の作る曲をこれからもずっと
美夜だけに歌ってほしい」



『本当?』



「俺が嘘ついたことある?」



ふるふると首ふる



その頬に伝う涙を
俺は少し震える手で拭った



『ずっとそばにいてね。』



「うん、ずっとそばにいるよ」


これが彼女の口癖のようになった