優に腕をぐいっと引っ張られる。





「優、速い!!」





「誰のせいで遅刻しかけてんだよ!!」





さすが元陸上男子ということもあって、足が早い。





対して元吹奏楽部の私は、大の運動オンチ。





そして、走ることが一番大嫌いなのだ。





優のたくましい手が私の腕を強く掴む。





触れているところが、熱い。






私の家は幸い学校にとっても近い。






歩いて10分の距離だから、ぎりぎり間に合うか間に合わないかの長さ。





校門を抜けると、もう生徒の人影は見る限りなくて。





昇降口に入って急いで上靴に履き替える。





「よし、走るぞ」





再び握られる腕。