「浮気したことは、本当に悪かったと思っている。
だが俺は、お前のことを忘れたことなんかねぇーし」

はぁっ?会いにも来ずに
よくそんな嘘をぬけぬけと言えるな。

「嘘ではないからな!!
別れた後もやり直したくて会いに行ったら
お前“よく会いに来れるな!?”とキレたじゃないか」

あっ……そういえば。
すっかり忘れていた……。

一度別れた後にやり直したいと来たけど
頭に血がのぼっていた私は、追い返したんだった。

「あれから俺……かなり凹んで
誰とも付き合っていないんだぜ!?
そりゃあ、この仕事始めたから信じてくれねぇーかも
知れないけどさ。
あくまでも客と従業員としてだし」

「俺は、今でも茜のことが好きだ!!
チャンスが、あるならもう一度やり直したい。
本気なんだ!!」

真剣な表情で言ってきた。

匠が……そこまで私のことを?

一瞬心が揺らいだ。

あんな風に真剣に言われたことがないから
でも……。

頭の中は、課長のことばかり浮かんでくる。

何で課長のことを考えるか分からないけど
会いたくて堪らない。

揺らぐ自分が嫌っ!!

そんな時だった。

「生田!?」

私の苗字を呼ぶ声が聞こえてきた。