「テメェ、出海丸だな……?」


次の日の朝、マルは登校中に頭のカラフルな不良五人に囲まれた。

透明な空気にそぐわないそれらに、周りの人々はそそくさとそこから離れる。


「あぁ? だったらなんだよ」

「一年のクセに調子乗ってるらしいじゃねェか」

「あ? ……なんの話だ」

「この前、俺んとこのトップがテメーにヤられたんでなあ……『お礼』、言いに来たんだよ」


そう言って指を鳴らす。そして__周りの男たちがマルに殴りかかった。
それをマルはひょいとかわす。


「(なんだよ、弱えーじゃん……笑える)」

「なんだよ、ずいぶん逃げ腰じゃねぇか、オラァッ!」

「アンタたちみたいなザコを相手にしてるほど、俺は暇じゃねぇんだよ」

「なんだとっ……!?」

「調子のんじゃねぇっ!」


周りに人はいない。集中できそうだ。

襲いかかってくる男五人を見据え、マルはニヤリと不敵に笑った。




「あ、マルくんおはよう」


マルが教室に入ると、クラスメイトと話していたメノウがそう挨拶した。


「……はよ」

「マルくんはさぁ、入る部活とか決めたの?」


メノウが言うと、他のクラスメイトも逃げ腰になりつつ、小さく「気になる……」と呟く。

マルは決して嫌われているわけではない。

ただ単に近づきにくいだけなのである。


「部活とか興味ねぇ」

「そうなんだ。スポーツできるのにもったいないね」


メノウがそう言ったのにはわけがある。

最近体育でしたスポーツテストの結果、マルがオール10に近い点数を取ったのだ。