『えっやばい、綾瀬(あやせ)さん!?』

『あの二人が並ぶと圧巻だな~』


どうやら、サヤカの前に飄々と、なんの違和感もなく座った彼は綾瀬というらしい。


「僕のお弁当ちょっとあげる。はい、卵焼き」

「……ありがと」


そんな彼はメノウとサヤカに目もくれず、マルにいわゆる「あーん」をしていた。

そんな二人の様子に周りが色めきたつ。
二人だけの雰囲気にメノウは思わず見とれてしまった。


「……あ、もしかして、この二人が出海の友だち?」


その言葉にメノウはハっとなる。
その隣でサヤカは「友だちなんて……」と若干照れていた。


「あ、はい。山田メノウっていいます」

「守元爽夏です」

「ふうん。僕は綾瀬凉人(あやせ すずと)。2年だよ。出海が女子と仲良くなるなんて珍しいね」


そういうと凉人はメノウをじっと見つめた。
え? と困惑するも、見つめ返す。

……マルくんとは反対のタイプだ。
メノウは思う。

一度も染めたことがないのであろう、痛み知らずの艶やかな黒髪、ピカピカの肌、きちんと整えられた頭髪と制服。

不良と交わることを知らない優等生みたい。

それと比べマルくんの髪の毛はブラウンだし、肌も、髪も染めてないの? って思うくらいキューティクルはんぱないけど、漂う不良感は凄い。

ピアスも開いてるし。制服だって気崩している。

二人はどうして仲良くなったんだろう。学年だって違うのに、この入学してから4日という短い期間で、どうやって。……


「……スズ」


メノウのそれらの思考は、マルのその言葉によって遮られた。

涼人がメノウから視線を外す。