「ごめんね、マルくん。お昼はいつも屋上なんだって? 知らなくて……」

「いや、行くよ」


え? と、メノウは珍しく驚いた声をあげた。
その隣でメノウの友だちも呆然とする。


「行く」


マルは羞恥で顔が赤くなってしまいそうだったが、意地で堪えてもう一度念を押した。



「えっと、メノウの小学からの友だちの、守元爽夏(もりもと さやか)です……」

「…………」


なんだよその沈黙。目の前に座るマルに、メノウは心の中でツッコミを入れた。

珍しくなんの抵抗も見せずに従ったな、と思ったのも束の間、それは後悔に変わる。

賑わう食堂で席を確保できたのはいいものの、メノウたち、特にマルの周りだけポッカリと穴が空いたように人が寄り付かない。

みんな遠巻きに好奇の視線を向けているだけ。


「(これじゃ食べづらいし、それに)」


__マルくんが孤独みたいじゃないか。


いまだ目を合わさずにいる二人に、まずはよろしくって言ったらどう? と助言をしようとした。

しかし見合いのときの男女みたいだなあと余計なことを考えたら、こんな茶々は必要ないか、という考えに至り、メノウはおとなしく二人の出方を伺った。

そのときだった。


「あ、いた」


その場に、よく通る良い声が響いた。


「ここらへんの席だけなんか異様に空いてない? ラッキー。
ていうか出海、お前もしかして今日の昼飯パン一個? ばっかだなー、僕の方が小さいのに僕の方がいっぱい食べてるじゃん。そんなんじゃ筋肉維持できないよ」


一人でマシンガントークを続ける謎の人物に、メノウの目はもっと真ん丸になった。

でも観衆はそうではなかったらしい。