マルとメノウが出会ったのは、入学式が終わり、そのあとすぐだった。
席が隣になった。
中学の頃のマルの席替えの記憶といえば、恐れられ、嫌がられ、隣になった生徒がその威圧感に耐えられず登校拒否になるなど、様々だった。
今年もそんな風になるんだろう、めんどくせえなと、高校に入学したてのマルは思った。
しかし違った。隣になったのは、マルにとって未曾有の女だった。
『名前は丸いのに、雰囲気めっちゃ尖ってるじゃん』
誰もがマルを遠巻きに見る中、メノウだけは、彼の目をしっかり見据えていた。
『うるせえ。話しかけんじゃねえ』
『でも可愛い名前。可愛いから、人物ももっとやわらかい人かと思った。こういうのを<ブーバキキ効果>っていうんだっけ』
『……はあ? 何言ってんだお前』
『出海くん、だと良さを活かしきれないわね……シンプルにマルくん、でいっか。素材の良さを活かすってね』
『っ、ふざけんな! その名前で呼ぶな!』
『あー、ごめん、嫌? でもだめ。マルくんの方が呼びやすいもん』
『……ていうか、誰だよてめえ』
ほとんど表情を変えずに話す彼女に、マルは恐怖を感じた。
でもそれは一瞬のことだった。
『私? 私は山田メノウ。これから一年間、よろしくね! マルくん!』
チカチカと、眩いほどの笑顔でメノウはそう言った。
――いつ振りだろうか。こんな風に、無条件に笑顔を向けてくれる人に出会ったのは。
その日、マルは家に帰ってブーバキキ効果とメノウを検索した。
メノウは宝石だった。でも、馬の脳みそみたいで、マルは少し笑ってしまった。
