なぜ、メノウは俺に一々かまうのか。
夢のなかのマルは、真っ白な部屋で独り考えていた。
メノウにとって俺は重荷にしかならない存在だ。
クラスメイトの信頼と人気の的であるメノウ。
異性にも同性にも好かれ、誰にでも分け隔てななく接するメノウ。
……ああ、いま、答えが出た。
そうか。
__俺は、『たくさんの人』のうちの1人なんだな。
マルの意識が急浮上する。
いつもなら起きてすぐ内容を忘れてしまう夢を、今日は運悪く鮮明に思い出せた。
枕に顔を埋める。
最悪な気分のなか、遠足の1日の始まりを迎えた。
「マルくんおはよー
……って、めっちゃ顔色悪いじゃん。楽しみすぎて寝れなかったとか?」
「小学生かよ、」
ガンガンと響く頭痛のなかでもツッコミは忘れない。
マルはこめかみを押さえた。
「……体調悪い?」
「別に、平気」
「無理しないでね。あと、バスの席、一緒に座ろうね」
今度は別の意味で頭を抱えた。
……この女は、無自覚で色々やらかしやがる……!
「なんとかっていうダチと一緒じゃなくていいのか」
「サヤカのこと? 別に常に一緒にいるわけじゃないよ。そんなの鬱陶しいじゃん。
それに、体調悪い人ほっとけないし」
別の友だちと話すサヤカを横目で見ながら言う。
「……俺に常に付きまとってくるのは鬱陶しいことじゃないのか」
「わざと鬱陶しくしてるのよ」
サラリと言い放ったメノウは、無邪気に笑ってみせた。
