マルくんとメノウちゃんの恋のお話


「マルくんはね、頭軽そうに見えるけど別に馬鹿じゃないよ。平均的だよ」

「お前はちょっと黙ってろ」


一歩前に出たメノウを手で制止する。
そして自身の背中に隠した。


「この間、喧嘩しただろ」

「あ? ……あぁ、もしかしてあのときの」

「思い出したか、」


……あのめっちゃ弱かったヤツらね、とは、さすがのマルも自粛した。

ここで下手に挑発でもしたらメノウに被害が行きかねないと思ったからだ。


マル背中の幅にすっぽり収まったメノウをちらりと見る。

……いや、別にコイツのためとかじゃねぇ。
怪我でもしたら温泉が染みるだろ。


「おい、」


いまだペラペラと喋る男たちを横目に、マルは小声で言った。


「走る準備しとけ」


そう言いつつ、後ろ手でカウントをする。


「そういうワケで、『出海丸』、あのときの借りを返すぜっ!」


じりじりとこちらに寄る男たちを、じっと見据えた。


「3、2……」


「お前なんか『オレらのトップ』が出て来なくても、オレらだけでヤれるわ! 死ねぇっ!!!」


「1、……0!」


「あっ……、おい!」


マルはメノウの腕を掴んで走り出した。

メノウは「わほー」なんて声を上げながら呑気に、それでも速く足を動かす。


「待てっ!!」


一足遅れた男たちは、ぐんぐん2人に引き離された。



「くそっ、」

「オイバカっ、なに逃がしてんだ! 鈴他さんに怒られんだろっ!」

「……いいだろ、下のオレらに任せてないで、鈴他さん直々にリベンジすれば……」

「バカっ、間違ってもそんなこと言うなよ、鈴他さんが『狂った男』なの、テメェだって知ってんだろ……!」