「いっぱい買ったのにこれで500円分って、駄菓子って恐ろしいね。コンビニでポッキーも買おう」
「……まだ買うのか」
「半分はお家で食べるのー。っていうか、マルくんが買わなすぎ! なにさスルメだけって、バス移動舐めてんの!」
ぷんぷん怒ったメノウは、大量の駄菓子の袋を振り回した。
いつの間にやら散っていた桜を踏んで行く。
……いつもだったら、開花に合わせて涼人と散歩がてら花見をしたりした。
それをしなかった上、桜の存在をあまり意識してなかったなんて。
お互い忙しかったとは言えこんなふうになるとは思いもしなかった。
コイツのせいでもあるとマルはメノウを横目で見る。
……コイツが賑やかだったから、時間が目まぐるしく回ったのかもしれない。
入学式の日に出会ってから涼人以外のヤツと昼食を共にしたり、話したり、こんなふうに出掛けたり。
なつかしい日々が戻ってきたかのように、一般的な高校生の日常を過ごした。
マルは、ガサガサと重い音が鳴るメノウの袋を持ってやった。
メノウが目を真ん丸くする。
「持つ」
そのたった一言で、メノウの心はあたたかくなった。
「……あ、ありがとう」
女の子を気遣うなんて、マルくんは優しいなぁ。今だって車道側を歩いてくれてるし。
自分が女の子扱いをされていることに気づいてしまったメノウは、なぜだか顔が熱くなりながらも、元来た道を2人並んで歩いていた。
……そのときだった。
