「ごめん、メノウ、出海くん……委員会の仕事が入っちゃったから、2人だけで買い物行ってきて?」
そのときのマルの顔と言ったら、恥ずかしさと嬉しさと困惑を混ぜたような、そんな色をしていた。
「マルくんって、ふだんどんなお菓子食べてるの?」
一方、メノウは至って普通だ。
サヤカの言葉を聞いたときも、「そうなの、お疲れ様」と言っただけで、マルと2人きりだということをまったく意識していないようだった。
上の空だったマルは一気に現実に引き戻される。
「間食はあんまり、」
「おー、ストイックだねぇ」
マルの微妙な反応にも、メノウはいつも通りの言葉を返す。
他人と意思の疎通というものをしたことがなかったマルは、なんとか「別に、」とだけ答えた。
2人は学校の近くの商店街に来ていた。
ドラマやアニメによくある、どこか懐かしい感じのする商店街。
お客と店員の距離が近いアットホームさがやはり商店街らしい。
駄菓子屋さんがあるから、たまにはそういうのもいいでしょう? というのがメノウの言い分だった。
「私はねぇ、生クリームは苦手なんだけど、そのほかはなんでも好き。さいきん体重がやばいの」
マルはそれを聞いて、女子らしいことも考えるのだな、とメノウの性別を再確認した。
他の女子ならマルに怯えるのに、怖がるどころかグイグイくる。
そんなところを気に入っているのも事実だ。マルは密かに自覚した。
