「マルくん、今度一緒におやつ買いに行かない?」


バッグに教科書類をを入れながらメノウは言った。
隣でメノウの支度を待つサヤカがぎょっと目を剥く。


「いいよね、サヤカ?」

「えっ、まぁ、私はいいけど……」


ちらり、サヤカはマルの顔を窺った。
……ひっ、ひいっ、やっぱり怖い。なんであんなに無表情でいられるんだろう。……あれ? でも、顔が赤い……?


マルは戸惑っていた。別になんてことのないただの約束だ、それなのにこんなにも照れ臭いのはなぜだ。

ゴクリと息を飲んで答える。


「……行く」

「ほんと? わーい! じゃあ遠足の前日の放課後ね。約束!」


ん、と白く細い小指を差し出すメノウ。それを見てマルは動揺した。


「これ、」

「指切りげんまんだよ、マルくん」


子どもみてぇ。そう笑いつつも、マルはそれに自身の小指を絡める。

すべすべとした感触にドキリと心臓が跳ね上がった。


「じゃあ、また明日ね! マルくん!」


ひとつも惜しみを見せずに指を離したメノウに、マルは寂しいような切ないような、そんな感覚をおぼえた。


「出海、帰ろう」

「……おう」


それは涼人が迎えに来るまで続いた。

「(……毒でも回ったか)」

そんな馬鹿なことを考えながら。