周りの音が一瞬で消え、何が起きたか理解できなかった。



伏し目がちなシバくんの顔が目の前にあって、頭の後ろに回された手に力が込められる。



離れた体温に、私は息さえできずに。



「ごめんね」



雨に濡れたシバくんの表情は、泣いてるようにも見えた。



「…なん、で…」



今の私には、ただそれしか言えなくて。



「オレを見てほしい。…今ここにいないタマのことじゃなくて、オレのこと」



いつものおちゃらけたシバくんの様子は、どこにもなく。



ただ真っ直ぐに私を見る、男の人の顔がそこにはあった。