甘さより酸味の強いみかんの香り。



「なんか元気ないわね、どうしたのよ」



「…あのねリリ」



言いかけて口をつぐんだ。



リリにばっかり頼ってちゃ、私は何も気づけないままな気がした。



「ううん、なんでもない」



「美羽?」



「ごめんちょっと気分悪いから、部屋戻るね」



席を立った私に、リリは何かを察したように、優しく笑って頷いてくれた。



「早く、良くなるといいわね」



全てを分かってるような言葉だった。