「晴くん、今日は一緒に帰れるー?」
「雪乃……帰れるに決まってんだろ」
北園さんにだけ見せる泉くんの特別な顔。
優しく笑う、好きな人にだけ向ける笑顔に、私の胸はキュッと締め付けられた。
好きな人には、彼女がいる。
そう、北園さんっていう彼女が……。
「やったー!嬉しい♡」
「そ、そうかよ……」
困ったような照れた顔も、全部が北園さんのモノ。
私がどんなに焦がれても手に入れられない、大好きな人の表情だった。
――ズキンッ。
北園さんの事は好きじゃない。
だけど悔しいことに、北園さんがさせる泉くんの笑顔は、世界一眩しいから、私は敵わないんだと実感する。
私はこの席で、誰にも言えない、秘密の片想いをしていた。


