「全く、ほっとけないんだから困るよ」
「……喧嘩売ってる?」
「ハハッ、ここは……えっ、八雲くん口説いてるのぉ〜?って、可愛く照れてみせるところだよ」
「早く帰るよ、傘貸して」
八雲のおバカ発言はスルーする。
でないと、いつまでも帰れないから。
「ひどーい、梓チャン。俺、いじけるよ?」
「勝手にして」
「つれないねぇ、梓は」
また、ヘラヘラと笑う八雲が、ビニール傘を広げた。
八雲、私ね、こんな風に言ってるけど……。
本当は八雲の明るさに、救われてたんだ。
なんて、からかわれそうで絶対に言えないから、心の中で感謝をする。
こうして私は、八雲の傘に一緒に入って雨の中、ようやく帰路についた。


