「私、北園さんが大嫌い。記憶が無くなる前は、何かと突っかかってきたから」 「雨音……」 「だから、私は北園さんの記憶を奪った。それだけが、事実だよ」 そう言って笑えば、泉くんはやっぱり戸惑った顔をする。 どうか、私の嘘が泉くんの心を少しでも軽くできますように。 それくらいしか、私に出来ることなんて無いんだから。 「それじゃあ……ね」 「あ、おいっ……」 泉くんを振り返ること無く、昇降口へと戻る。 そんな私を、当たり前だけど、泉くんは追いかけたりはしなかった。