「私のこと、助けてくれたでしょう?」
そう言って、にこりと笑う北園さん。
この笑顔を、私は知らない。
だって、北園さんはいつも私に突っかかってきて、私のことなんて、大嫌いのはず。
でも、それは北園さんが知らない過去の話だ。
「そっか、忘れてるから……」
だから、北園さんはこんなふうに私に笑いかける。
いつか、全てを思い出したら、きっとこうはいかないだろう。
「忘れてるって?」
「……北園さん、あまり私に近づかない方がいい」
キョトンとする北園さんに私はそう言った。
だって、思い出した時に、きっと嫌な気持ちになる。
少しでも、私に笑いかけたことに。


