「あ、あの……」
私と北園さんは、手を繋いだまま、見つめ合う。
私を責めたいなら、責めてくれていいのに……。
私が北園さんから奪ってしまったものは、北園さんを大切に想う誰かにとっては、命よりも大切なものだったはず。
そう、泉くんにとって……。
謝って済む問題じゃないし、今更弁解しようなんて思わない。
全て、ちゃんと受け入れる。
それで、いつか北園さんの記憶を取り戻してみせるから……。
「あ、あのね……助けてくれてありがとう」
「……え?」
てっきり責められるだろうと思っていた私は、拍子抜けする。
どうして、私なんかにありがとうなんて言うの?
やっぱり、頭を打ってどうかしちゃったんだ。
でなきゃ、記憶を奪った私に、お礼なんて言うはずがない。


