「梓、泉クンのこと、まだ……」
「……やめて、言わないで八雲」
それを言われると、泣いてしまいそうになる。
必死に感情を押し殺してるのに、全て水の泡だ。
「ん、ごめん……まぁ、俺に出来ることがあんなら、協力するし、頼ってよ」
「うん、ありがとう」
「どーいたしまして、んじゃあまたピアノ弾いて?」
八雲がわざとらしく明るい声を出す。
気を使わせたかな……でも、今は1人じゃなくて良かった。
1人でいたら、きっとグルグル考えちゃうだろうから……。
「仕方ないなぁ……1曲だけね」
でも、これじゃあ私、八雲の言われるがままだ。
それもそれで癪だし……。
だから、立ち上がってスカートの埃を叩きながら、あくまでついでを装ってそう言った。
「よっしゃ!」
ガッツポーズする八雲の注文通りに、私はまたピアノを弾くのだった。


