♪〜♪〜♪〜
「ふぅ……」
最後の一音の余韻が終わると、私はそっと鍵盤から手を引いた。
――パチパチパチッ
「今日もめっちゃいい演奏だったよ〜」
するとそこに、八雲の拍手が贈られる。
八雲、ピアノのことなんて分かんないでしょうに……。
それでも調子のいいこの男に、泉くんから言われた一言に落ち込んでいる時なんかは、救われているのも事実だ。
「どうもありがとう」
棒読みのお礼をして、私はピアノの椅子から立ち上がる。
そして、床に座る八雲の隣に腰掛けた。
「それで、なに考えてたのー?」
「何って?」
「またまたー、何かあったから、一心不乱にピアノ弾いてたんじゃないの?」
八雲は、時々鋭い……。
ヘラヘラしてるけど、実は人の気持ちに敏感な人だと、私は思ってる。


