「いやー、泉クンを、おびき寄せたくて」
「分かった、そこで歯ぁ食いしばれ白石……」
怒りMAXな泉くんは、怖い顔で八雲に歩み寄る。
それに動じることなく、八雲は私の背中をポンッと押した。
「わっ……」
「あ、危ねぇっ、大丈夫か雨音」
前によろけた私の体を、泉くんがとっさに抱きとめる。
わ、泉くんとの距離、近すぎるよっ……。
それに顔が一気に熱くなった。
「勘違いしないでよ、俺はいつでも梓を奪いに行く覚悟だから。だけど……」
その言葉に、私は泉くんの腕の中から八雲を振り返る。
八雲は優しく笑って、私を見つめていた。
「今は、梓が笑ってるんならそれでいいって思える。幸せになんなよ、梓」
そう言って音楽室の入口へと歩いていく八雲に、私は気づいてしまった。
そっか、八雲は……。
弱虫で、意気地無しの私に泉くんに向き合う機会をくれたんだ。
自分を悪者にしてまで、私の背中を押してくれる。
そんな八雲に、胸がいっぱいになった。


